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西川善文頭取、逝く

投稿日:2020年9月28日

話題の書「ザ・ラストバンカー」の執筆者で、まさしく激動期の金融界を独特の経営手腕をいかんなく発揮、「民間にあって不良債権処理に文字通りのたうち回った」西川三井住友銀行元頭取がこの世を去った。晩年、民営化後の日本郵便改革では、かんぽの宿撤廃など敏腕をふるいながらも、政権交代のはざまに陥り、「道半ば」ではあったが残したものは少なくない。

同じ激動の金融界にあって、立ち位置は必ずしも同じではなかったが、いろいろな場面で公私ともに接点が多々あったこともあり、思い出をつづる(しのぶ)意味も込めて、このブログにしたためることとした。

ともかく、こんなにとんがりが目立ち、切れ味も鋭い金融マンに出会ったことはない。その分、共感するところも少なくなく、晩年まで折に触れて直接お目にかかりに、薫陶を受けた偉人(異人)であった。

氏は、多忙なさなかにあっても、丁寧に時間を割いて下さり、「ひまわりよりも月見草が好きだ」「ジャイアンツよりもタイガースが好きだ」「名声・富裕には無関心だが、権力・威厳は大切だ」「ブレないことが信を生む」「勝負事は負けてはならない。ゴルフやマージャンもしかりだ。中途半端はよくない」「上り坂より下り坂のほうが知恵がいる」「笑顔よりも渋面がいい」などなど、心に響く(時にドキッとする)言葉が吐露され、今も心に残っている。

とある週末、住友銀行の企画部長として敏腕を発揮されていたころ、こちらは日銀大阪支店の営業課長職。お互い,麻雀やゴルフが共通の趣味であったが、西川さんは「麻雀はプロ級の腕前ゆえ、素人とはしない。ゴルフなら構わない」とのことで、有馬温泉にほど近いパブリックコースで、「まったくのプライベート」ということでしばし汗を流す機会があった。最終ホールまで勝ったり負けたりを繰り返していたが、18番のロングホールで互いにパーオン、こちらはロングパットを直接カップインしてバーデイー、西川さんはワンピンからのバーデーパットがくるりと回ってやむなくパーへ。その直後悔しさのあまり彼愛用のパタークラブが5メートルくらい宙に舞い、同伴のキャデイーさんもさすがにびっくり。幸いパタークラブはグリーン外の芝生に落下してことなきを得たが、ご本人の唇をかみしめながらの悔しがりようは尋常ではなかった。

また、当時日銀の窓口指導という金融機関指導(バブル膨張の量的規制策の一環)が華やかなりし頃で、そのために大阪支店の取引先である、住友、三和、大和、住友信託、4行の、企画、経理、融資、海外各担当部長を呼んでの月例営業課長ヒヤリングが開催されていたが、住友銀行の西川企画部長だけは「3か月連続無断欠席(副部長代理出席)」が繰り返された。他行の他部長軒並み皆勤の折の無断欠席であり、「仕振り調整」との窓口指導の下、本社営業局とも相談の上、「日銀貸し出しの回収」指導を取らざるをえなかった。その後、バブル崩壊と金融機関の不良債権問題深刻化に伴い、ウインドウガイダンスと呼ばれたこの「窓口指導」は時代にそぐわないということで撤廃されるが、今となっては西川さんとの触れ合いの中で思い出される懐かしい思い出である。

金融機関トップを歴任後、時の政権に乞われて民営化後の郵政事業の経営を任されるが、政権交代の渦に巻き込まれ、「志半ばにしてトップ交代」のやむなきに至った。折に触れ抜本的経営改革について、文字通り膝を接しながら意見を交わし、共感するところが少なくなかったが、「政治の波に飲み込まれると身動きが取れなくなる」とのぼやき(くやしさ)を聞かされ、うなずかざるを得なかった。

ご本人の名著「ザ・ラストバンカー」は今なお、小生の書棚で毅然として「にらみつけるように」ならんでいるが、今は亡き大親友I君(元三井住友銀行人事担当役員)からの「母行では病に侵されさみしい晩年を迎えておられる」との身近な便りが胸の奥を去来してやまない。

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