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駆け出し支店長時代のほろ苦い思い出

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64年続いた昭和が終わり、平成が始まるころ、大阪の営業課長職で不良債権問題に四苦八苦する在阪金融機関指導を終え、先陣を切って北海道東端の支店長への異動を命じられ、「寒いところだが、自然がいっぱいでこれからは季節もよくなるし、単身赴任が終わりワイフも同行してくれるのでいい思い出を作ろう」と期待を込めつつ赴任した。
そのころの「ほろ苦い思い出」を二つ。

(アキレス腱の教え)

着任早々のとある週末、地域の金融機関が集った恒例の職場対抗ソフトボール大会で「40代前半、まだ現役でやれるのでピンチヒッターでいいから試合に出させてほしい」と支店内の部下である若手監督に頼み込んで出させてもらった。地元都銀の道東支店が常勝で、その年も下馬評は「拓銀の優勝で決まり」と目されていた。ただその時はくじ運がよく順調に勝ち進み、決勝戦で常勝拓銀と相まみえるところとなった。回が進みランナー一二塁の最終場面で、若手監督の部下行員はなんと小生に代打での登板を命じてきた。久しぶりに素振りを繰り返しながら打席に立った。疲れの出てきた敵方のエースはど真ん中に「打てるかなー」とばかりの甘い球を投げてきた。往時を思い出し思い切りバットを振りぬいたところ打球はレフトの頭上を越えての長打となった。二人のランナーがホームに走りサヨナラ勝ちを収めたところで左足くるぶしあたりで「パリン」という音とともに足首がぶらぶらして走れなくなり三塁ベース上でうずくまってしまった。応援に駆け付けていた支店スタッフの「優勝」の歓声は聞こえたが、そのまま整形外科病院に担ぎ込まれた。診断結果は「左足のアキレス腱完全断裂。出勤はできるが、リハビリが半年ほど続く」とのことであった。

週明けからギプスを巻かれての車いす生活が始まり、その後本店で開催された支店長会議は松葉杖で出席、本部の口さがない役員からは笑いながら「まさしく失脚だね」と揶揄された。今となっては懐かしい冷や汗の思い出である。

ギリシャ神話に出てくるアキレスは、トロヤ戦争の英雄である。幼児、母親が息子を不死身にするために、かかとを支えて川に浸したところ全身のほとんどが不死身となったが、かかとだけは弱点として残り、敵将にそこを狙われ殺される。とかく傲慢に陥りやすい人間、とりわけそのリーダー(英雄)に対し、どこか弱点を与え驕りを戒めているのかもしれない。

ただ、おかげでアキレス腱のリハビリには「ともかく徒歩が一番」とのことで、散歩の習慣が身につき、老境に差しかかった今も、「一日7千歩、毎日早朝散歩」に励んでいる。

(支店の大口営繕工事中のボヤ騒ぎ)

戦後間もない昭和27年に設立された道内最新の釧路支店は道東最大の都市に本拠を構え、広大な農業地帯・帯広と北方領土に対面する根室を守備範囲としており、その面積は「四国+大阪府」に匹敵していた。水産業や林業大手企業が隆盛を極め、海底炭の主力工場も衰退する石炭産業にあってなお光り輝いていた。

ただ、さすがに支店設備の老朽化は否めず、大口の営繕工事が大手ゼネコンS建設主導で着々と進められていた。とある週末、支店のT次長から「ただいま宿直メンバーから工事中の支店でボヤが発生し、消防車が来ているとのことです。支店長は本部の人事部長夫妻をご案内される予定が入っているので、私と営業課長で対応しますので、人事部長のご案内を優先してください」との報告であった。小生は「ボヤとは尋常でない。消防車のほかパトカーやマスコミは来ているか?」と尋ねたところ、「すでに来ています」との返答であった。人事部長対応は後回しにして、支店に直行し消防と警察、マスコミ対応を最優先、「隣接のホテルへの延焼はなく、地下金庫内の日銀券、一階営業場にある日銀ネットのCPUにも支障はない。週明けには平常営業が可能」と答えるとともに、本部の営繕担当部署である文書局長にも一報を入れた。

人事局長夫妻の道東案内は2時間近く遅れたが、旧知の仲ということもあって事情を説明し平謝りに謝り、「事態が事態だけにやむを得まい」と納得してもらった。直後に開催された恒例の支店長会議では文書局長より「釧路支店で週末大口営繕工事中ボヤ騒ぎが発生しましたが、支店長の迅速な対応で、翌週明けからは平常営業ができ、事なきを得たとのことです」との特別報告がなされ、胸をなでおろした。
原因は、大手ゼネコンの下請け業者が工事中に煙草を吸い、消し方が不十分で寒冷地ならではの配管を包んでいる「防寒ウレタン」に燃えカスが移ったため」との説明で、S建設本社副社長が菓子折りともども謝罪に来釧(らいせん)、「タバコは良くなかったですが、大事にならずに済んでよかったですね」と厳しめに申し上げた覚えがある。

時を経て、分野違いの阪神高速道路会社(民営化)の会長兼社長職として経営に携わることがあったが、着任早々グループ含め3000人の社員全員に「いい話はしなくていい。悪い話ほど迅速に報告してほしい。全責任は私がとる」と話したことがあるが、この時の苦い経験が教訓になっているのかもしれない。同じころ同業のNEXCO中日本高速で「笹子トンネルの天井崩落で9名もの死者を出す」という痛ましい事故があったが、平素から「設備の老朽化ですべてのトンネル内の天井吊り下げボルト総点検は最優先課題!!」と保安セクションに厳命していたこともあり、その際の当局検査でも「阪神高速は老朽アンカーボルトが全て更新されており万全」と評価され胸をなでおろしたことがある。

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