
日米通算4367安打というとてつもない快挙を成し遂げ、28年間貫いた野球人生に幕を閉じた、マリナーズのイチロー外野手に日本列島が沸き返っている。
プロスポーツ界ではオリンピックで2大会連続金メダルに輝いたフィギュアスケートのス
ーパースター羽生結弦に匹敵する世界的偉業であろう。
開幕戦終了後、都内での深夜の引退会見は1時間20分にも及び、その中身も味わい深く、
不世出の大打者の最後の姿に涙ぐむファンも少なくなかった。
会見で印象に残ったいくつかのやり取りを拾い上げてみた。
「自分を貫いたものは何か?」・・・「野球を愛したこと。これは変わることがなかった
」
「子供たちへのメッセージを」・・・「熱中できるものが見つかれば、それに向かってエネルギーを注ぐことができる。自分の前に立ちはだかる壁にも向かっていける」
「米国のファンは?」・・・「最初は厳しかった。一年目のキャンプでは日本へ帰れとしょっちゅう言われた。結果を残したあとは親近感を持たれ、敬意も払われたりした」
「妻の弓子さんへは」・・・「一番頑張ってくれた。試合前に食べる妻が握ってくれたおにぎりは2800個くらいあった。3000個ぐらい作ってもらいたかった。妻にはしばらくゆっくりしてほしい。それと愛犬の一弓。老齢でフラフラになりながら懸命に生きている」
「今後監督としては?」・・・「信望がないからそれはない。それは自分でも判断できる」メジャーリーグで活躍した日本人選手では、あの「トルネード投法」で有名な野茂投手が印象に残っているが、彼も日本のプロ球団指導者の道は歩んでいない。その生きざまは「周囲の雑音に惑わされない求道者」の姿を思わせ、どこか似てなくもない。
翌日のマスコミ報道の活字を拾っていくと、「走攻守三拍子そろった逸材」とか「ひたむ
きな鍛錬が偉業を生んだ」「努力の天才からの贈り物」といった見出しが躍ったが、確か
に、野球界の長嶋や王さらにはスケートの羽生といった類まれなアスリート達も目に見え
ないところで人一倍の努力を怠らない。
この3人のけた外れのトレーニングぶりや未曽有の復活劇もあわせて紹介してみたい。
長嶋・・・彼は千葉県の佐倉出身だが、シーズンオフになるとキャンプから離れて一人で
伊豆でトレーニングに励んでいたことは有名で、今では伊豆の国市に長嶋記念館
が出来ているほどである。
王 ・・・荒川博監督にこっぴどく指導され、一本足打法を発掘、畳が擦り切れるほど素
振りを繰り返し、さらに真剣を使って一刀のもと新聞紙をもスパッと切断する練
習風景は今もって瞼に焼き付いている。
羽生・・・選手生命を絶たれるような大けがから奇跡的に復活、ソチとソウルの二つの五
輪を制覇した偉業、その後の震災被災地への熱い想いの数々、さらには郷里仙台
での凱旋パレードでは駅前のメインストリートが群衆で埋め尽くされるほどであ
った。