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あるベンチャー経営者のちょっといい話

投稿日:2020年5月11日

今から3~4か月ぐらい前のことである。

「今年の冬は暖かいね。この分だと桜の開花も早そうだね」と、会社のスタッフとのんびりそんな会話を交わしていたとある日の午後、取引先の社長さんのご紹介で、あるベンチャー経営者が入り口のドアをたたきながら、あわただしく駆け込んでこられた。

元宮大工だったその方は、今はかっての腕を生かして住宅リフォームの会社を立ち上げておられるが、今回の中国武漢発のコロナ騒動で大手出先工場からの部品調達がぱたりと途絶え「今にも会社がつぶれそうで、下請けも含めみんな青息吐息です。どこかお金を貸してくれるところをご紹介してもらえませんか?」

名刺交換すると開口一番この話である。「うちは金貸しではなく、金融機関紹介のお手伝いをする会社ですよ」「存じてます。この度のコロナ騒ぎで下請けの払いもままならず、大変なんです。資金繰りを支援してくれるところはありませんかね?」よく聞くと、「住宅関連の部品を調達する国内大手企業2社の中国主力工場が武漢にあり、突然部品が全く入ってこなくなった、このままでは首をくくるしかない」とのこと。

「お取引の社長さんのご紹介ということでお目にかかりましたが、とても手に負える状況ではなさそうですね。お役に立てるかどうかわかりませんが、ともかく無料診断でいいですから、お話を伺いましょう」

「あまりにも急なことで下請けさん含め皆さんの切羽詰まった状況はたいへんですが、まず何ができるか一緒に探っていきましょう。短慮はいけません。ご家族は?」

「43歳で妻と小学生の娘二人の4人暮らしです。会社は私一人でやっています。あと、古くからの税理士さんと顧問2人の3人が相談相手です。昨年までは下請けの払いをして何とか収支トントンでやってました」

「わが社としてはまだNDA(秘密保持)も含めて契約もしてませんし動きようがないです。ともかく下請けさんも含めて、できるところまで精一杯自己努力してみてください。コロナ騒動ということであれば、いわば中国発の国難に巻き込まれたベンチャー企業さんということですので、必ず救いの手が出されるでしょう。これまでご相談されてきたところは?」

「小さなTINY HOUSEを2週間ぐらいで建てられる技術はありますので、東京のはずれのとある村の村長さんに話しましたところ、理解してもらえ相談に乗ってもらっています」

「それなら、そのTINY HOUSE建築のビジネスを本格化してください。庭先や広場、公園、空き地での隔離・病棟ビジネスにもなります。下請けさんも含め皆さんご家族総出でチラシを配ったり、のぼりを立てたりしながら、広めてもらうことが大切です。自然がいっぱいの東京近郊の村落や近くの市町村などにもわかってくれる人たちの輪がひろがり、周辺地域の理解者もきっと増えてきます。そうなると必ずお金はついてきます」こんなやり取りを1時間ばかりした。

「家族や仲間と気持ちをそろえれば、きっと立ち直れます。2~3か月したらまた状況を教えてください」

内心「こりゃ大変なことになった」と思いつつも、ともかく目の前の社長さんを元気づけることが先決、とばかりに精一杯鼓舞しながら、この日の面談は終わった。

ほどなく、中国発のコロナ騒ぎが本格化しだした。隣国の日本も巻き込まれ、昨今のグローバル化の流れをあざ笑うかのように疫病コロナの嵐は、まさに燎原の火のごとく世界的規模で瞬く間に広がっていった。

このほか、同様のビジネスを「リモートオフィス」という形で、千葉県沿岸部の漁村や新潟県、北海道のリゾート地で、自治体や地域電鉄会社と組んで駅の空きスペース等を活用したリモートオフィス活用型住宅建築のベンチャー企業が現れ、地域の金融機関等紹介を始めているが、このコロナ騒ぎで「しばらくはベンチャー経営者とはリモート会議でプラン作成や事業計画策定を急ぐ一方で、政府系中小企業金融機関や保証協会の緊急融資制度(セーフティーネット)について説明、連休明けから地域金融機関等の紹介活動に入る」というあわただしい状況にある。

数か月たって、先ほどのTINY HOUSE ビジネスについて、件の社長さんにやはりリモートで近況をおうかがいしたところ、「おかげさまで村長さんと相談して何棟かのHOUSEが建ち、地域の地銀や信金さんから緊急資金の調達もいくつかでき、首は括らなくて済みました。今日は家族4人で持ち帰り弁当で食事してます」との報告があり、「連休明けにでも、スカイプ会議をしながらお話を伺いましょう」ということで、ひとまず胸をなでおろした。

このような「駆け込み寺」的融資先紹介依頼の相談が結構あるが、ともかくお話を伺い、「社長さんが今できることは何か?どなたに相談しておられるか?」などについて、なるべく寄り添いながら(時に耳の痛いことも言いながら)、リモート相談に努めている今日この頃である。

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