
いろんなスポーツがあるが、その中でも大相撲はどちらかというとこのところ斜陽となっており、戦後まもなくの「相撲ファンがテレビにかじりついた」風景は今や懐かしい思い出として位置づけられている。国技とはいえ、近年、モンゴル勢に横綱や大関といった主役の座を奪われたり、若貴といった人気力士が表舞台から去っていったことも一因かもしれない。
こうした低迷状態の中にあって、このところ青森県や石川県といった地方出身の若手力士たちが台頭、特にこのほど千秋楽を迎えた春場所では、なんと110年ぶりという新入幕力士の尊富士の優勝という快挙で久しぶりに相撲人気に火が付いた。また、優勝争いが被災地石川県出身の大の里で、共に20代半ばの若い平幕力士だったから、土俵はかってないほど盛り上がり、これからの大相撲人気回復に期待するファンが久しぶりに夕方からのテレビ放映にかじりついたように思う。
先の初場所、やはり久しぶりに若手ホープと目されている琴の若という力士が大関に昇進したのも大きい。彼は小生の生まれ故郷鳥取が生んだ遅咲き横綱琴桜の血を引いた孫息子というのもいい。しかもまだ25歳という若さで、この春場所でも後半戦まで優勝争いに食い込んでいた。一説によると名横綱大鵬と似て、大柄な割には体が柔らかく、「押しだけでなく組んでも強い」といわれており、これからが楽しみである。
また、今場所優勝した尊富士の劇的シーンも素晴らしかった。十両優勝すると新入幕早々の今場所でも11日間勝ちっぱなしで、大鵬の連勝記録に並ぶ偉業を達成、また楽日前日の取り組みで片足を怪我、救急車で病院に運ばれ、「休場やむなし」とも目されていたが同門横綱照の富士に「お前なら大丈夫。千秋楽の相撲はとれる」と激励され、夜中になって伊勢ケ浜親方の部屋に出向き「明日は土俵に上がります」と申し出、持ち前のスピードと気力で見事勝利を勝ち取るという離れ業を成し遂げた。優勝が決まった直後、「無理はさせたくないが、本人は取りたいという。ここで止めると一生悔いが残る」とハラハラしながら土俵に上がらせた親方の目にうっすらと涙がにじんでいたのも感動的であった。賜杯を抱えながら優勝インタビューに応じた際の「ギプスをはめ痛み止めを打ちながらも、ともかく土俵に上がり記録よりも記憶に残る相撲を取りたかった」とのひとこともよかった。
故郷の青森県五所ケ原では、黒山の人だかりの中にあって、最前列で凝視していたおじいちゃんおばあちゃんの飛び上がっての喜びようはとてつもなく、いてもたってもおられず急遽国技館まで足を運んだお母さんの「ともかく息子の怪我が心配で仕方がなかった」と涙声で喜びを語る姿も美しかった。