
小栗旬と星野源が絡んだ、話題作「罪の声」を観た。
気鋭のミステリー作家塩田武士の原作がしっかりした作品の映画化で、執筆までに十分な時間をかけ、慎重に紡がれた渾身の小説で、目下多くの書店に平積みされているので、読まれた方も少なからずあるのでは。
この作品は、世界を震撼させたいくつかの未解決事件をモチーフにしたフィクションである。一連の難事件の解決に敢然と挑むのは、正義感あふれる新聞記者阿久津英士(小栗旬)で、一方もう一人の主人公曽根俊也(星野源)は、父から受け継いだテーラーを営み、愛妻と愛娘とで実直にくらしているが、偶然にも幼いころの自分が日本中を震撼とさせた未解決大事件に声の「囮」として利用され事件に巻き込まれていく。
いまから35年前、関西で「グリコ社長誘拐事件」があり世間を騒がせ結局迷宮入りとなり、「キツネ目の男」が指名手配されたりしたことがあるので、あるいは覚えておられる方もあるかもしれない。この事件が下敷きになっており、そこへ株価操作による悪徳相場師、「キツネ目の男」、関西やくざなどが絡んだ「ギン萬事件」、さらにはオランダの「ベックマン社長誘拐事件」などもくわわり、世界的規模で当時のマスコミ報道はエスカレートしていった。
幼児期に知らぬ間に「声」を録音させられ、事件の重要参考人とされていく、実直なテーラーの曽根俊也には、過激派でロンドン在住の叔父曽根達也(宇崎竜童)がおり、一連の事件に大きくかかわっているが、やくざの組長や幼馴染で元マル暴警官らのあくどさに嫌気がさし、叔父は姿を隠すようにロンドンへ移る。しかし、ロンドン郊外のヨーク大学の古本屋で静かに余生を送っているが、執拗に追跡する阿久津記者にその姿を目撃されるところとなる。二人が、晩秋の銀杏並木の中で、古びたベンチに座りながら、事件の全貌を静かに語りながら罪を吐露していくところはロンドン郊外の穏やかな風景ともマッチしてすこぶる印象的である。
この映画では、敏腕の脚本家野木亜紀子が「新聞記者出身の作家塩田さんならではの視点に深く感動しながら慎重に脚本を練り上げた」とか、「撮影中に小栗旬と宇崎竜童がロンドンで石畳を歩きながら対峙する名場面に思わずもらい泣きした」といった隠れたエピソードも紹介されており、作品に厚みが加わっている。
また、映画全体に流れる主題歌「振り子」は、人気シンガーソングライターUruの優しく包み込むような歌声と清楚な美しさを神秘的に漂わせるあどけない素顔とともに、「この曲は今は悪いほうへ振っているが、その振り子は必ず光の方へと舞い戻る」との彼女の心温まるレコード盤メッセージになぜか癒される。