
心待ちしていた、「寅さん」映画のリメイク版を楽しく見た。
さすが山田洋二監督ならではの、いい作品に仕上がっていた。
主人公は甥の「満男(吉岡秀隆)」で、50年という歳月を経て、「満男、困ったことがあったら、いつでも俺の名前を呼べ」そう言い残して去っていった寅さんが半世紀ぶりにあのかばんをぶら下げて柴又の団子屋に戻ってきた。フーテンの寅さんは「妹想いは格別」「情の深さは天下一」「この上ない照れ屋」そして「最後は逃げ腰」。このキャラクターは一向に色あせていない。
子役時代からすっかり大人びてきた寅さんの申し子ともいえる吉岡秀隆の好演が光る。初恋の人「泉ちゃん」(後藤久美子)との絡みも随所にさりげない思いやりが伝わり、サラリーマンから作家に転身してはにかみながらも、愛娘ユリ(桜田ひより)への思いやりが初々しくてまぶしい。吉岡秀隆の作家役としては「三丁目の夕日」がおもいだされるが、こちらの方が自然でさらりとしている。神田神保町の本屋でのサイン会で「泉ちゃん」に出会い、ドギマギして次に並んだファンに間違えて「泉」とサインするあたりは芸が細かい。
満男は6年前に妻と死別してユリと二人暮らしだが、そのことは泉ちゃんには伏せるように周りに頼んでいるが、最後に成田空港まで見送りに行ったところで、いたたまれず自ら告白してしまい二人はひしと抱き合う。
有名なメロン騒動の名場面は見事にリメイクされており、リリイ(浅丘ルリ子)が妹夫婦(倍賞千恵子と前田吟)から「お兄ちゃんと結婚してくれたらどんなにいいかなー」と思い出話を懐かしむリリイのしぐさや戸惑う寅さんのドギマギぶりには二人のハピーエンドに期待しつつどんどん引き込まれてしまう。
印象に残るマドンナとしては、そのほかにこの間亡くなった八千草薫や大原麗子や栗原小巻、吉永小百合などが思い出されるが、カメラを背負いつつ旅する薄幸の人妻かたせ梨乃が登場しなかったのがちょっぴり残念だった。
映画の冒頭、柴又の川べりで主題歌を口ずさむのは、サザンの桑田佳祐だが、葛飾柴又の雰囲気とぴったりする。また、帝釈天の御前様役はひょうひょうとした笠智衆だったが、その後継者である、笹野高史の僧衣姿もぴったりである。49作品まで住職にくっついて寺男源公役を演じていた佐藤蛾次郎がリメイク版でもそのまま登場しており、その息の長さには驚いた。
すでにご覧になった方もあろうかと思う。心の温まるおすすめ作品です。