
師走に入ると「忠臣蔵」ものが増える。
いくつかの「忠臣蔵」作品を観てきたが、最近足を運んだ気軽なものに、このタイトルの作品がある。原作は江戸時代研究では有名な東大教授山本博文氏の手になる本格もので、大石内蔵助が実際に残した「忠臣蔵決算書」を下敷きに、討ち入り計画の実像を記した話題作で、著者初の映画化である、というからそんなにいい加減なものではない。
とはいえ、制作が松竹と吉本興業というから、娯楽性にはたけていてエンターテイメント作品としての質は高く、観客を飽きさせない。
配役陣も多彩でコメデイータッチのストーリーはふんだんである。
大石内蔵助(筆頭家老)・・・堤真一
矢頭長助(右衛門七の父親,勘定方)・・・岡村隆史
大高源吾(毒見役)・・・濱田岳
不破数右衛門(牢人・剣豪)・・・横山裕
菅谷半之亟(馬回、軍師・参謀)・・・妻夫木聡
大石理玖(内蔵助の妻)・・・竹内結子
揺泉院(内匠頭の妻)・・・石原さとみ
大野九郎兵衛(次席家老)・・・西川きよし
浅野内匠頭(赤穂藩主)・・・阿部サダオ
主役の堤真一は「クライマーズ・ハイ」や「日本の一番長い日」「海賊と呼ばれた男」での重厚な役どころから一転してコミカルな(一見間の抜けた)内蔵助役を演じているが、肩の力を抜いたひょうきんな演技が見事で、幅のある多彩な演技力はなかなかのもので、ナイナイの岡村との組み合わせも抜群である。
いっぽう、岡村演ずるところの矢頭長助は内蔵助と同い年でこどものころに一緒に川遊びを楽しんだ仲であるが、劇中では経理取り締まり方の「そろばん姿」が印象的で、「上段2つ、下段が5つのそろばん」を巧みにはじいていく場面が頻繁に出てくる。最後は内蔵助の身代わりとなって吉良一派により謀殺されるが、史実では長助は「神文誓詞」(内蔵助が揺泉院に提出する正式帳簿)を提出して義盟に加わり、大阪・堂島で困窮の末病死したようである。
忠臣蔵のストーリーは「吉良邸討ち入り、上野介斬首、内蔵助らは上野泉岳寺にて切腹」と進んでいくが、この決算書版ではその場面は出てこなくて、討ち入り直前の予算内場面で結末を迎える(留飲を下げるには今一つ物足りなさが残る)。