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「ラストレター」を観る

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今から20年ほど前に、中山美穂と豊川悦司の絡んだ、俊才岩井俊二監督作品の話題作「ラブレター」が上映されたが、先日その姉妹版ともいえる同監督の「ラストレター」を観た(文庫本も読んだ)。

単純なメロドラマではなく、そこには岩井監督ならではの様々な愛の形が、時代の変化を織り込みつつ、ミステリアスに複雑に展開していく。

話の中心にはレター(手紙)があるが、一度鑑賞しただけではわかりにくい。配役陣が豪華で、主人公の乙坂鏡四郎役に福山雅治(学生時代は神木隆之介がこなす)、そして彼を慕う裕里役に松たか子、その姉未咲役に広瀬すず(回想シーンと娘鮎美の一人二役として登場)らが見事な演技力を発揮してくれる。特に鮎美のいとこ役(松たか子の娘颯香役)の森七菜(新人)の演技がキラキラと愛くるしくまぶしい。また、DVで未咲を自殺に追い込む怪しいならず者亭主の阿藤役に豊川悦司、その愛人サカエ役(身ごもっておりお腹が大きい)に中山美穂がけだるさをまといつつ登場して、このストーリーをさらに複雑かつミステリアスにしている。

また、裕里には夫があり、ためらいつつもひそかに鏡四郎に想いを寄せるさりげない演技のかけらかけらが胸を締め付ける。

レターを出すが、決して住所を書かない、「もう書きません」と言いながら、心の片隅では限りなく鏡四郎からの音信を待ち焦がれている。

冒頭、姉未咲の葬儀シーンから始まり、ほどなく高校時代の同窓会の案内状が今は亡き姉に届く。

妹裕里は身代わりとして出席する。心密かに姉のかつての恋人で自分が想いを寄せていた鑑四郎に会えるのではと思い、姉に成りすまして出席する。成りすましが分かった鏡四郎は帰りのバス停まで追いかけてくる。そこで一冊の本を渡される。タイトルは「未咲」。小説家を志す鏡四郎にとりたった一冊の人気本である。

学生時代から文章力のあった鏡四郎は、卒業式で答辞を読む美貌の秀才未咲から添削を頼まれる。この上なく心のこもったその答辞レターだけはいつまでも大切にしている。夫にひどい目にあわされた彼女だが、そのレターだけは大切にしており、この秘密は愛娘鮎美だけには分かっている。

ラストシーンで、娘は仏壇の奥から今は亡き母親から託された答辞レターを鏡四郎におずおずと差し出す。ラストレターである。愛娘が「いつかきっとあなたが来てくれると思っていた。もう少し早く来てほしかった」、泣きながら絞り出すように福山雅治に迫る広瀬すずの名演技に涙が頬を伝う。

撮影は岩井監督の故郷仙台で行われ、しかもオールロケという凝りようである。美しい広瀬川とそのあたりの風景は、あのさとう宗幸の名曲「青葉城恋歌」を彷彿とさせ、岩井監督の脳裏にもこの恋歌の歌詞がどこか刷り込まれていたのかもしれない。

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