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「スパイの妻」を二度観る

投稿日:2020年11月16日

超話題作「鬼滅の刃」でごった返しているデイズニーランド連結のシネコン「イクスペアリ」の一角で、ひっそりと上映中の「スパイの妻」をなんと二度も観た。

ストーリーが難解で、かつ肝心の結末がワイフと全く異なっていたためである。先般、本コラムでご紹介した「浅田家」や「望み」がわかりやすかったのに対し、この作品は「果たして主人公の妻はどういう気持でああいう行動をとったのか?」「スパイ(夫)の疑惑に包まれた行動や動機は?結末は?」、ともにいっぱしの映画通を自負している我々夫婦だが、今回はストーリーが難解で、一回の鑑賞では全く意見が分かれ、二度見てもお互いの意見は一致しなかった。むしろ、ご覧になった方々の感想がいただければ幸いである。

パンフレットで、多くの映画通が鑑賞後の印象を寄せているが、そこでも以下の通り、各人でかなり感想が異なっており、ミステリー度がかなり高く、かつ、そこを狙った黒沢清監督の心意気も伝わってくる。ベネチア国際映画祭で銀獅子賞(監督賞)を受賞したのもむべなるかな、といったところである。

ケイト・ブランシェット(ベネチア国際映画祭審査委員長)・・・「スパイの妻」が銀獅子賞にふさわしいことは明らかでした。

クリステイアン・ペッツオルト(映画監督)・・・オペラ的なリズムと画つくりで政治的ドラマを描く、このような作品には久しく会っていなかった。しかも1930~40年代の世界を現代のスタイルで描き出すなんて!

綾辻行人(ミステリー作家)・・・この映画を観終えて、おそらく多くの人々が口にするであろう一言を、僕もやはり発せざるを得ないーーお見事です。

馬場典子(フリーアナウンサー)・・・戦時下の物語と思いきや、いつの時代にも起こりうるラブサスペンスだった。仕事柄、言葉や表情には敏感なほうだと思うのですが、この映画には完敗。聡子と優作、二人を取り巻く人々の、嫉妬や駆け引き。愛か、正義か、時代の空気か。人が一番大事にするものは、人によって違う。それにしてもなぜ?フィナーレを迎えてもなおつかみきれない人の心。早くだれかと語り合いたい。

大沢真幸(社会学者)・・・女の愛と男の愛.両者はともに純粋であるがゆえに嚙み合わない。この愛の逆説をかくも見事に描いた作品を私は他に知らない。

ストーリーは、1940年日本軍による真珠湾攻撃の一年前の神戸から始まる。高橋一生(若手気鋭俳優)演じる福原物産社長の優作は無類の映画好きで、プライベートではスパイ映画を作成、ビジネスでも欧米人との交流が避けられない。一方、最愛の妻聡子(蒼井優、抜群の好演)には幼馴染のエリート憲兵泰治(東出昌大)がおり、彼は立場上国防意識を背負い夫婦の行動に疑惑を持ちつつも、陰に陽に聡子のことを気遣う。

優作は、台湾で目撃した日本軍細菌部隊の非人道的行為に憤激、現地で知遇を得た美しい薄幸の女性ともども帰国、彼女は非業の死を遂げたとの軍情報が入るが、愛妻の夫への疑惑は晴れない。世界情勢を予見し「コスモポリタン」を詠う夫の、疑惑を払しょくする強い言葉に深い愛を感じ、「一緒に亡命しよう」、「軍の機密文書を持ち出すために別々のルートで逃亡しサンフランシスコで落ち合おう」との夫からの提案にいったんは合意し、行動に移すがことはそう簡単には運ばない。1945年、終戦前夜の東京空襲シーンは一見悲劇的な結末にみえるが・・・(フィナーレのナレーションをお見逃しなく)。

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