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話題の書「府中3億円事件を計画・実行したのは私です」を読む

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刺激的なタイトルで書店をにぎわせているこのタイトルの本を手にした。
読むかどうか?
しばらくためらっていたが、白田という著者が書き出しで「読者の皆さん。ようやく心を
決めました。この場を借りて、ひとつの告白をさせていただきます・・・」とあり、フィ
クションかノンフィクションか判然とはしないが、ともかくすでに時効になったとはいえ
、一時期世間を騒がせたいわゆる迷宮入り事件であり、ともかく「読んでみよう」という
ことで、表紙を隠しながら密かにページをめくっていった。
この事件は、今から50年以上前の1968年12月10日、東芝府中従業員ボーナスが偽の白バ
イ隊員によって現金輸送車ごと奪われたもので、その額は3億円(今の貨幣価値にして約
20億円)、多くの遺留品が遺されていたが、その後時効になり結局迷宮入りのとなったも
のである。
「私は息子夫婦と暮らす一人の老人でございます。先日、長年連れ添った妻が69歳で他界
しました。大きな悲しみとともに、胸の中に「私の過去を息子に伝える時が来たのではな
いか」と思い、葬儀の後息子を呼び事件のすべてを話しました。彼は当初疑惑の色があっ
たが、次第に瞳孔が開き、そのうち決意のようなものが宿していきました。彼の第一声は
私の想像を超えたものでした。「世の中に発表しよう。人は罪を犯した以上、それを償わ
なければいけない。そのことでこれからぼくたちも苦しむと思う。それは親父が自分一人
で苦しむよりも辛いものかもしれないけれど、それも含めて贖罪なんだ。親父はそこまで
考えなきゃいけない。そこまでひっくるめて親父の犯した罪なんだ」息子の鬼気迫る言葉
と説得力に、私は圧倒されました。
世間に公表できる方法は?息子が見つけてきたのがインターネットサイトでした。そこか
ら筆を執ることにしました。
本題に入る前に、一つだけわかっていただきたことがございます。この事件で私が奪った
大金は保険会社から補填されたという話はご存知でしょうか。そのことから三億円事件は
「誰も損をしない事件」とおっしゃる方もいらっしゃいます。そういった理由から私は罪
の意識がないと申し上げているわけではありません。全く異なる理由で罪の意識が一切な
いのです。私は途方もない大金を手にしました。そして同時に親友を、この世に置いて最
も大切だった親友を失ったのです。この事件は私の青春そのものなのです。」冒頭に、こ
んな自己弁護とも自己満足とも受け止められかねない告白が比較的長々と綴られている。
親友とは、幼馴染の省吾である。彼は三億円事件の最も重要な容疑者とされながらも、事
件後に自宅で服毒自殺する(毒は両親が混入したが、それを知りつつ省吾は服毒したと白
田は推理)。警察官の息子であり、事件の共謀者ではある。父親の警察手帳を盗んで現場
の遺留品として工作する(この事実はマスコミには永遠に伏せられた)。その後、省吾は
一部の学生運動仲間の誘惑に惑わされ米兵相手の売春に身を落としていく。二人で立てて
きた計画を実行するには、犯罪の足かせが重く、容易には立ち直れず自ら命を絶つ。
省吾のかっての恋人橋本京子は、最後には計画の実行犯白田とともに警視庁の目の届かな
い関西方面に一緒に逃亡する(69歳で他界した妻と思われる)。

ラストで、学生運動のリーダーであった、三神千晶からの白田宛の恋文が京子の目に留ま
り彼女の語りとして長々と披露されるが、これは本筋にはかかわりがなく、著者白田は青
春の一コマとして残したかったのかもしれない。
読後、二つの大きな疑問が残った。
一つは、中退した大学(学生運動が盛ん)の名前が出なかったのはなぜだろうか?
今は亡き親友や妻そして学生運動の女性リーダー(彼に想いを寄せる、法曹を目指す)と
の違いは?
今一つは大金の使い道は?やはり何か事業を始めるために使ったのだろうか?
なぜそこの記述は避けたのだろうか?
贖罪とするなら、避けてはいけないような気がするが?
こうした疑問が付きまとった。真相に近い感じはするものの、白田という人物が告白文と
いう形で書き記したフィクションという疑問は払拭しきれないというのが率直な感想であ
る。
あるいは、読者によっては「これだけのことが書いてあればやはり真相であろう」と感じ
る人もあるかもしれない。

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