
東京に住む京都山城高時代の同級生たちと時々会う。
その中に、無類の読書好きがいて、結構気に入った作品があると一読を薦めてくれる。
京大では当初文学部に入学、2年生から経済学部に転部したが、本好きは今も変わらない。
最近薦めてくれた本に、京大ボート部マネジャーの著した「艇差一尺」というのがある。
半世紀前のまだ戦後色が残るころ、メルボルン五輪代表をかけてライバル慶大と熾烈な争いを演じた京大ボート部が、わずか一尺(30センチ)という僅差で涙をのんだ物語である。
そこには日本のレガッタ史に残る名勝負をクライマックスに、漕艇仲間たちの青春群像が時代の波にもまれながら繰り広げられ、著者の筆力に惹かれぐいぐいと引き込まれていく。
特に、冒頭この物語の主人公である菅キャプテンが優れた土木技術者として社会人生活を終えて肝臓がんで急死、彼のこよなく愛したクラシック音楽葬に集まるかつてのボート仲間たち、とりわけ彼を兄と思慕する光永後輩主将(同じ四国今治の出身で高校、大学とも同じ学校に通い主人公を追いかける)が艇庫のあった故郷の浜辺に供花するところから始まる。
ラストでは、亡くなったキャプテンの在りし日の素顔(音楽との出会い、彼女との淡い思い出、学生運動にかぶれたころ)や慶大との勝負から学んだ人生訓などが、ボート仲間によって、熱く哀しく語られる。
時折、かの有名なボート部歌「琵琶湖周航の歌」が部員たちにより高らかに朗唱され、この唄が生まれてきた背景や歴史が湖周の風景とともに語られる。
優れた研究者で部活での名伯楽でもあった高村コーチの巧まざる指導ぶりや、亡き友菅キャプテンの墓参に駆けつけるライバル慶大須永キャプテンの姿にも胸を打つ。
ボート部とは雲泥の実力差であったが、小生が青春を共にした同じ河童族の水泳部仲間との思い出とどこか重なり、タイムスリップしてうなずきつつ読んだところもあり、一読を薦めてくれた友人に感謝している。