
今回の全豪オープンでは、大坂なおみの快挙とともに、歴史に残る様々な出来事があった。
大坂選手の全米に続いての快挙は、この21歳の若きプレイヤーが世界のテニス界の女王
としてしばらく君臨する予兆を思わせた。特に決勝戦でのクビトバとの激戦は長く語り続
けられる名勝負であった。
敗れたクビトバの挨拶は心に残るものであった。実はこのクビトバにはとんでもない壮絶
な物語があった。2016年暮れ、刃物を持った強盗に襲われた彼女は利き腕の左手に重
傷を負い一時選手生命まで危ぶまれた。その後の懸命のリハビリのかいあって翌年の全仏
オープンから見事に復活、今回の全豪オープンでは1セットも落とさず決勝まで勝ち進ん
でいた。大けがからここまで立ち直った彼女、過去の忘れられない事件を思い出しながら
、陰で支えてくれた家族への愛に感謝し涙ぐむ彼女の姿は、オレンジ色の美しい夕焼けに
包まれたメルボルンのセンターコートを埋め尽くした大観衆に感動を与えた。
一方でこの一年ですい星のごとく現れたなおみのビクトリースピーチは、「ハロー、ソリ
ー。人前で話すのは苦手。史上最低のスピーチになりそう」とどこまでも天真爛漫で、
その無邪気さとあどけなさは、多くのなおみファンの心をわしづかみにした。
男子シングルでの錦織選手の活躍も日本人にとどまらず多くのテニスファンの心を揺さぶ
った。王者ジョコビッチとの対戦を目前にした4回戦でのスペインの名選手パブロ・カレ
ノブスタとの5時間を超える記録的死闘は彼の体力を無情にも奪いつくし、
王者との決戦では2セットまでで無念の途中退場という悲劇に見舞われた。
対戦の直後、「錦織には素晴らしい素質と実力があるが、その彼が直前までの死闘で疲労
困憊しかろうじてラケットを振る姿は見ておれなかった」とするジョコビッチの声が胸に響いた。
この錦織もまさしく今大会での「記録よりも記憶に残る名選手」となった。
歴史と伝統あるテニスという世界的なスポーツにあって、とりわけ日本人選手の活躍が目
立った全豪オープンであったが、多くの物語を残しながら暑い夏の終わりとともに静かに
その幕を閉じた。