
学生時代は邦画もさることながら特に洋画にのめり込んでいたが、最近は洋画を観ることが少なくなった。なぜか?理由はいくつかあるが、やはり醍醐味である以下三点での物足りなさが大きいように思う。往時をしのびつつ私見を申し上げたい。
まず第一は、なんといっても「ストーリーと役者」である。これまでの名画の中で、このストーリーでのナンバーワンは「ショーシャンクの空」であろう。脱獄映画であるが、無実の罪にさいなまれながら、囚人仲間レッド(モーガン・フリーマン)にも恵まれ、見事に脱獄に成功する主人公アンデイ(テイム・ロビンス<トム・ハンクスを抑えて抜擢された名優>)と、刑期を終え彼を訪ねてくる親友レッドと見上げるショーシャンクの透き通るような空が忘れられない。刑務所暮らしの中でさりげない思いやりを見せる若き日のモーガン・フリーマンの名演ぶりがとりわけ光る。同じ脱獄映画で、「手錠のままの脱獄」があるが、これは人種問題を乗り越えていく色の違った二人が鎖でつながれたまま脱獄する。シドニー・ポワチエ(黒人)とトニー・カーティス(白人)の若者が、憎しみから友情へと雪解けのようにほどけていく姿が胸を打つ。恋愛ものにも多くの心に残る作品があるが、しいてあげれば、絶頂期の新妻ソフィア・ローレンと新婚早々応召された最愛の夫マルチェロ・マストロヤンニとの悲恋物「ひまわり」であろう。しかも、スクリーンいっぱいに咲き誇る黄色いひまわりの場面が、目下戦乱に見舞われる盛夏のウクライナというのも悲しい歴史をほうふつとさせる。
次いで大切なのは、「スクリーンミュージック」である。ここでもやはり「ひまわり」があげられるが、アラン・ドロンの「太陽がいっぱい」、そして不朽の名作「ゴットファーザー」の「闇の帝王」マーロン・ブランドの重厚な演技とバックミュージックはいつまでも耳に残る。このほか、ピエトロ・ジェルミの「鉄道員」「刑事」やジュリエッタ・マシーナとアンソニー・クイーンの「道」とか、ちょっと趣は異なるが4人の少年の彷徨を描いた「スタンドバイミー」もジョン・レノンの楽曲とともにいつまでも心に響く。
三つめはラストシーンである。秀逸は、オードリー・ヘプバーン(プリンセス)とグレゴリー・ペック(記者)の「ローマの休日」で、王女と記者の間で目配せしつつ交わされる秘密のラストシーンである。このほか、イングリッド・バーグマンとハンフリー・ボガートの「カサブランカ」での別れ、「終着駅」でのジェニファー・ジョーンズ(若き人妻)の空き貨車内でローマの青年と別れを惜しむように激しく抱擁するシーンもいい。さらに、最も心に残っているのが英名画「サマーストーリー」のイモジェン・スタッブスの魅力である。夏休みに友達と訪れてきたロンドン医学生とのひと夏の出会いは農家の生娘ミーガン(イモジェン)にとっては一生で一度の恋であった。彼女は「必ず迎えに来る」と約束した彼を信じてリンゴの木の下で雨の日も嵐の日も健気に待ち続ける。ラストシーンで胸が詰まるような山場があるがここではあえて触れたくない。素顔のイモジャンはケンブリッジ大卒のインテリで、ミーガン同様独身のまま63歳の今なおテムズ川上流でハウスボート暮らしをしているという。ノーベル賞作家ゴールズワージーの名作「リンゴの樹」が原作であり、そのひたむきさが心を濡らす。