
宝塚男役トップのあの天海祐希が、「老後の資金がありません」というとても楽しいテーマの映画に出るというので、二度も同じシアターで観た(初回はワイフが眠りこけていてストーリーの大半を忘れていたので、再度足を運ぶ羽目に・・・マル秘)。
再上映とあって、館内はガラガラで鑑賞環境としては申し分なく、「特にソーシャルデイスタンスが求められる昨今、人気作品を周回遅れで観るのも悪くない」とまさしく実感。
主演の天海祐希の大熱演はもちろん、もう一人の全盛期松竹歌劇トップスター草笛光子の年を感じさせない熱演ぶりも見もので、特別出演した三谷幸喜監督も「草笛光子さんの顔に唇が触れ合うほど接近するおいしい役をいただき、心臓がどきどきした」と早速ハートマーク付きのメールを送るなど、こぼれ話にも事欠かない。
ストーリーは、浅草の老舗和菓子屋「後藤家」が主な舞台。老舗和菓子屋はお決まりの斜陽商売で、家計を切り盛りする嫁の篤子さん(天海祐希)の気苦労は絶えない。まず、ファーストシーンは後藤家当主が大福まんじゅうをのどに詰めて窒息死、葬儀の場面ではやり手の葬儀屋(友近、物まね芸人)に豪華な棺桶や祭壇を押し付けられ渋々承諾するが、肝心の弔問客は「まばら」で香典も少なく大赤字。そこへ、ひとのいい旦那の章さん(松重豊)が勤める建築会社が倒産、ハローワークに日参するが、窓口の担当女性からは「空気が読めてませんね。53歳で何のとりえもないお年寄りに今時手ごろな働き口などありませんよ」とつれない返事。また、愛娘後藤まゆみちゃん(新川優愛)からは宇都宮の金満餃子屋の歌手崩れのバカ息子(加藤諒)の子供を宿し、できちゃった婚」を告白され、篤子さんは度肝を抜かれる。そこへ、こともあろうか、妹ファミリーと同居していたおしゃれで浪費癖のある姑の後藤芳乃さん(草笛光子)を引き取る羽目に。嫁の篤子さんの気苦労は募るばかり。
気分転換に始めたヨガ教室で知り合った友人の神田サツキさん(柴田理恵)に愚痴をこぼすうちに、「うちのじいさんは元警察官で、堅物の大泉健三爺(毒蝮三太夫)は年金暮らしだが、蒸発して目下不在」、それをいいことに、サツキさんは友人の篤子さんとその姑芳乃さんと三人で結託して、年金詐欺まがいの芝居を打つ。そこへ蒸発したはずの健三じいさんがいきなり舞い戻り大騒動に。区役所の年金受給者確認職員森口さん(三谷幸喜)と芳乃さん(草笛光子)の絡みが滑稽そのもので、上述の「こぼれ話」につながる。
ファミリーの日常生活と老後資金を中心テーマに置きつつ、面白おかしく、しかしほんわかとした心温まるエピソードも取り混ぜてのドタバタ喜劇で、取り巻く脇役俳優陣も多彩で二時間の上映時間を忘れさせてくれた。
人生100年時代、老後資金は20百万円、親の葬儀、娘の結婚そこへ夫の失業と浪費癖のある姑さんを引き取り、家計は火の車。現代日本が抱える大問題に、まったく普通の主婦が立ち向かう、痛快なコメデイー・エンターテインメントがここに誕生した。あまりのドタバタ喜劇を少しピリッとさせるため、経済評論家の萩原博子さんご本人も特別出演させるなど、それなりの気配りものぞかせている。
ラストシーンでは、浪費癖の芳乃さんが本人の「生前葬」を思いつき、集まった香典で普段は迷惑をかけている篤子さんに「あなたは私の恩人で年金詐欺の共犯者だからとてもいとおしい。この生前葬で儲かったお金はあなたのために使うのよ」と念を押しつつ渡され、篤子さんは欲しくてたまらなかったルイビトンのバッグをようやく手に入れる。さらに人はいいが優柔不断の夫を急き立てて、ローン返済(17百万円)のために思い切って長年住んだ自宅を売却(37百万円)してシェアハウスへ転居、老後資金20百万円を何とか工面し、「ハッピーエンド」。