
山田洋次監督、渥美清主演の「男はつらいよ」シリーズにはまった頃がある。
葛飾柴又の団子屋を舞台に、主役の「フーテンの寅さん」はたった一人の妹さくら(倍賞千恵子)とおじさん、おばさん、甥坊主そして寺の住職(笠智衆)たちとワイワイガヤガヤ騒がしく過ごしているが、ちょっとしたことでもめてむくれたまま黙ってふらりと旅に出かける。
寅さんはテキヤ稼業の旅先で、毎回のように美しいマドンナに惚れるが、最後は振られて、失意のまま突然故郷の柴又に舞い戻ってくる。
この人情喜劇は多くの映画ファンを魅了、1969年(昭和44年)から1995年(平成7年)まで48作を数え、観客動員数は何と8千万人に及び、配給収入も500億円になんなんとしたという。
この山田洋次監督が目下メガホンを取り、えも言えぬユーモア喜劇でふつふつと人気を博しているのが、「家族はつらいよ」シリーズである。
すでに3作が上映されているが、いずれも映画館に足を運んだ。
2016年3月上映の一作目は平田家の熟年夫婦である、周三(橋爪功)とその妻富子(吉行和子)の離婚届をめぐる騒動で、危機一髪まで行ったが、何とか瀬戸際で元の鞘に収まる。
続いて昨年5月に上映された第二作は、高齢者にもかかわらず車の運転が好きな周三の免許返上をめぐるドタバタ喜劇である。
車にすり傷の絶えない彼は周囲の包囲網にあい、むしゃくしゃして通いつけの美人ママ(風吹じゅん)の一杯飲み屋でやけ酒をのんでいると、旧友の丸太(小林稔持)にばったり出会い、意気投合してへべれけになった丸太を我が家(平田家)へ泊めさせる。
見知らぬ人が泊まり仰天、ドタバタするがその場は何とか収まる。
その後長男の幸之助(西村雅彦)は母親や長女、次男ファミリーを一堂に呼び集めて緊急家族会議を開き、何とか親父の免許返上にこぎつける。
現在上映中の第三作「妻よ薔薇のように、家族はつらいよ」は長男の妻史枝(夏川結衣)が家出する話である。
専業主婦の史枝は親子3所帯6人家族の炊事、洗濯、掃除等家事に追われる毎日であるが、皆を会社や学校に送り出してほっとして二階で居眠りしているさなか、コソ泥に入られ、冷蔵庫にしまっていたへそくりを盗まれ、夫幸之助と大げんか、夫には何も告げずに家出してしまう。
家事を切り盛りする大黒柱を失った平田家は大慌て、緊急会議を開くが消息はなかなかわからない。
幸い幸之助の弟庄太(妻夫木聡)とその妻(蒼井優)が平素から実兄よりもその妻の味方であり、紆余曲折の末一時はどうなるかとやきもきさせられた家出・離婚騒動にも解決の糸口が見えてくる。
何れも、「熟年離婚」「高齢者免許返上」そして「コソ泥とへそくりと家出」といった日常生活に潜むちょっとしたトラブルをセリフも含めユーモアたっぷりに描いており、ともかく気軽に笑える作品である。
観客も、かっての「男はつらいよ」シリーズに足しげく通ったと思われる人が多かった。