
いつか本ブログでもご紹介したことのある、いわゆる一般的な「書店」ではなく、コンビニ内にある「ブックコーナー」で見つけた掘り出し物の中にこの「トヨタの会議は30分」という刺激的なタイトルの冊子があった。著者は戦略コンサルタント兼事業プロデユーサーの山本太平という人であった。
著者は、2004年京大大学院エネルギー科学研究所を修了後、新卒でトヨタに入社、長らく新型車の開発事業に携わり、豊田全グループで開催される多変量解析の大会での優勝経験を持つほか、常務役員表彰、副社長表彰の輝かしいキャリアを持つ。
その後、全く畑違いのTBSテレビへ転職、「日曜劇場」「レコード大賞」「SASUKE」など看板番組でプロモーション&マーケテイング戦略を手掛けたほか、TBS在籍時には古巣のトヨタ創業期を描いたスペシャルドラマ「LEADERSリーダーズ」のアシスタントプロデューサーとしてドラマ制作にも携わっている。
さらに、外資の世界的経営コンサル会社アクセンチュアでマネジャーを経験したあと、2018年には独立してビジネスデザインやマーケテイング分野で様々な企業と協働するベンチャー企業F6Design(株)を設立、これまでのキャリアを生かし、トヨタ式問題解決手法をさらにカイゼンし統計学を駆使した独自のマーケテイングメソッドを開発、企業・事業の新規プロデユース、ブランデイング、AI活用によるコンサル業を展開している。
本書のはしがきで、著者は世界のトヨタでじかに学んだところを、自らの実体験をもとに、「根回し段取りの力はもはやだれにも求められていない」とか「欧米系のGAFAM(グーグル、アップル、フェースブック、アマゾン、マイクロソフト)や中国系のBATH(バイヅー、アリババ、テンセント、ファウエイ)のコミュニケーション速度に追いつけ」「日本をけん引する企業はあくまで泥臭くそれでいて最速・骨太」「トヨタを飛び出し、異業種間転職を重ねた私だから見えてくるもの」「ギガ速コミュニケーションができない企業は今後、淘汰されていく」とぬるま湯体質が身についた旧来型の日本的巨大企業には耳の痛くなるような指摘が以下のような章にまとめて具体的に繰り返される。
第一章 極限まで無駄を減らす「時短会議術」(30分の会議で2か月分の時間捻出、会議に上司の付き添いは認めない、会議ではメモなしが暗黙知)
第二章 確実に相手をしとめる(1分でOKをもらえる資料の作り方、「口2耳8」の割合で話す)
第三章 トヨタ魂の根幹「本質思考」(「なぜ?」「定義は?」を繰り返し、トコトン自分の頭で考えさせる)
第四章 スピリットをつなぐ「トヨタの教育」(「嫌われてナンボ」のオヤジマインドで若手を育てる)
ただ、後半では「良好な人間関係を築く方法」(第五章)とか「人間力をかさ上げする『配慮』」のつくりかた」(第六章)といったことにも触れ、「自らを凡人だと認識して開き直る」とか「ご縁を大切にし、常に感謝の気持ちを持つ」といったビジネスの大原則、人生訓にも触れており、全体として示唆に富んだビジネスのバイブル的冊子ともなっており、2021年4月初版から3か月で5刷の人気冊子となっている。
たしかにトヨタの成長ぶりにはいろいろな「うなずける社風」が垣間見える。今から30年ほど前、かつて異業種交流等の場で親交のあったトヨタのT幹部からお目にかかるたびにじかに伺った、「ともかくトヨタは現場を大切にし、カイゼン意識が社員の隅々まで浸透している」「トヨタ家には歴代やり手の番頭さんがいて、同族経営の非をズバズバ指摘する」「トヨタ家の家訓は、会社は公器、もうけは社会に還元」「豪邸や高級車にはあまり興味はない」「トヨタの歴代会長と社長はトップに上り詰めてもけっして個室には入らず、同室で執務してガラス張りにしてお互いをけん制している。こんな大企業は日本のどこにもないのではないか」といったこぼれ話を聞いたことがあるが、この本を手にして、改めて「目からうろこ」のTさんとの思い出話が懐かしくよみがえってくるとともに、この良き社風が今も脈々と引き継がれていることを願うことしきりである。