
直木賞作家の佐藤愛子(101歳)が著した話題作「九十歳。何がめでたい」が映画化された。主人公の愛子役を今なお美しさを失わない草笛光子(91歳)が素顔を彷彿とさせるかのように歯切れよくこなしていた。この企画が持ち上がり、草笛は愛子と2度食事をし、その席で「あなたが私を演じるのも悪くない」とちょっとおだてられ、役を引き受けたという。監督の前田哲とは「老後の資金がありません」(天海祐希と共演)以来の付き合いで、この作品も面白く笑い転げたが、いいコンビなのだろう。実生活でも、互いに「言いたいことはけんか腰でもいいから、その場で口にする」仲だといい、その後監督は元旦には必ず草笛宅に尋ねてくるという。
断筆宣言をしていた愛子を何とか連載物に登場させようと、大好きな「甘いもの作戦」で愛子邸に日参する出版社編集スタッフの吉川役に、かって二枚目俳優として活躍した唐沢寿明が起用されており、くしゃくしゃの頭髪をかきむしりながら難しい役どころを巧みに演じていた。しかし、吉川は、生真面目で不器用な仕事人間で、妻や娘に冷たくされ離婚を迫られており、肩を落としながらとぼとぼ歩く姿が寂しい。でも、愛子からは何かと頼りにされるようになり、「いい爺さんなんてつまんない、面白い爺さんになりなさいよ」と励まされ、その時だけは不思議に背筋がピンと伸びる。
このほか、愛子の娘役を真矢みき、唐沢の妻役を木村多江が演じており、さらに「老後の資金・・・」作品同様、脚本家の三谷幸喜がここでも運転手役として友情(?)出演しており、エンタメ性に花を添えている。笑いの中に涙を誘う心にしみる作品に仕上がっており、人生100年時代を生き抜くヒントが伝わってくるように思う。観客も意外に若者が多く、しかも男女を問わないのもいただける。ただ、パンフレットが真っ赤であまりにも派手派手しく、帰りの電車でワイフにこっそり隠し持ってもらうほどであった。