
毎朝のラジオ体操仲間で、同じマンションに住む老人会の会長(メガバンク勤務ののち、介護業界の世話役を長く務めた好人物)が、小生の映画好きのうわさを聞きつけ、表題の本の一読を奨められた。
筆者の柴垣さんは、大手生命保険業界から介護業界の人事労務畑に長く勤務の傍ら、無類の映画ファンで1000本を超える邦画を鑑賞してこられたとのことで、登場する50名近い名優(いずれも60歳を超えた老優たち、物故者も少なくない)たちの、それそれの作品で演じてきた役どころやまつわるエピソードがふんだんに盛り込まれ、興味は尽きない。
著者は大学教授という立場もあってか、表紙の帯には、「介護業界20年の著者が映画を通じて語るかってない『役者論』『高齢者論』」とやや硬い表現が並んでいるが、中身は邦画界を代表する老優たちのスクリーンでの活躍ぶりが手に取るように伝わってくる素敵な作品である。
とりわけ役者の似顔絵を勝田さんという専門家が見事なカラーイラストで描いており、役者論に深みと親しみをさらに募らせてくれている。
とある財団法人の情報サイトで4年間にわたりWEB連載されてきた「あくなき者たち、円熟の輝きを放つ名優の軌跡」欄のコラムをこの度書籍化されたもののようである。
以下、特に印象に残った役者と、筆者が観た作品群から抉り出したその見事な「一口コメント」についてご紹介したい。
西田敏行・・・「ご機嫌より不機嫌がいい」(アウトレイジ・ビヨンド)
倍賞千恵子・・・「隠し事がよく似合う」(しあわせの黄色いハンカチ)
三浦友和・・・「二枚目が一皮むけた」(伊豆の踊子、沈まぬ太陽)
小日向文世・・・「にっこりばっさり」(清須会議)
岩下志麻・・・「華麗なる転身」(極道の妻たち)
仲代達矢・・・「くどくて、重くて、うまい」(人間の条件、乱)
吉永小百合・・・「説教を聞け」(おとうと)
大竹しのぶ・・・「快演イヤー」(ああ野麦峠、後妻業の女)
小林稔侍・・・「脇役道」(冬の華、鉄道員)
山崎努・・・「確信犯」(天国と地獄、マルサの女)
石坂浩二・・・「撤退戦をたたかう」(日本沈没、図書館戦争)
樹木希林・・・「究めたトボケ」(寺内貫太郎、万引き家族)
津川雅彦・・・「いけしゃあしゃあ」(ひとひらの雪、天国の駅)
市原悦子・・・「全方位的貪欲」(家政婦は見た、シャボン玉)
加藤剛・・・「マジメの代名詞」(喜びも悲しみも幾年月、舟を編む)
八千草薫・・・「かわいいという境地」(宮本武蔵、ゆずり葉の頃)
高倉健・・・「永遠の残侠」(昭和残侠伝、あなたへ)
高倉健ファンとしては、「もう少し広がりと温かみのあるコメントが欲しかった」ところであるが、大半の老優たちの素顔がほうふつと浮かび上がってくる名コメントであり、監視眼の鋭さに舌を巻く。