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「運び屋」を観る

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クリント・イーストウッドの最新メガホン作「運び屋」を観た。

90歳に喃々とするこの老監督,しかも麻薬組織の「運び屋」という難しい役を見事に演じ
切っているから驚きだ。

ハリウッドのスーパー・レジェンドと取りざたされるのもうなずける。
私生活でも、5人の女性との間に8人の子供をもうけ、いまなお20代の女性との交際が華や
かにマスコミをにぎわせている。

この映画でも8人の子供のうちの一人の愛娘を登場させている。
映画そのものは、2014年にニューヨークタイムズ紙の別冊「ニューヨークタイムズ・マガ
ジン」に掲載され全米を驚愕させた「シナロア・カルテルの90歳の運び屋」が下敷きにな
っている。

老優イーストウッドの演ずるアール・ストーンは、人生の機微をにじませながら、退役軍
人上がりの強靭な肉体と老獪さを武器に、リンカーン製大型トラックを法定速度内で安全
運転、時には寄り道をして監視役の麻薬カルテルメンバーをいらだたせ、時には捜査当局
を翻弄させながら、きっちりとブツを運び、やがてボスからも一目置かれる存在となる。
この映画のもう一つのポイントは「家族」である。
この家族について「男はつらいよ」で有名な山田洋次監督は映画パンフレットの中で、「
イーストウッドの作品には家族との関係がこじれた男の物語が多いが、この作品でも家族
をいとおしむ気持ちはありながらそれが果たせずいつものように孤独の影が付きまとう」
と解説する。

山田監督の手掛ける寅さんの生きざまも形こそ異なるが、一脈通じるところがある。
ところで、話をイーストウッドに戻すと、年を感じさせないエネルギーで彼が次々と打ち
出す幾多の名作に引き込まれるように頻繁に映画館に足を運んでいる。
「ミリオンダラー・ベイビー」(老いたボクシングトレーナーは長年不義理を重ねた娘に
せっせと手紙を書くが、音信不通で戻ってくる。そのたたずまいはいつまでも孤高のまま)

「マデイソン郡の橋」(あのメリメストリープとの道ならぬ恋。彼女の子供たちが見つけた手紙が母親の過去にさかのぼらせていく)

「許されざる者」(初老のガンマンは贖罪意識を背負いながら人生の終末に向かう。
「正義とは?人を裁くとは何か?」観るものに問いかける)

「グラン・トリノ」(ラオスの山岳地帯からやってきたモン族の若者と出会い、
次第に心を通わせ己の魂までも託すようになる。人種の壁を超えて)

「アメリカン・スナイパー」(イラク戦争に4度従軍し伝説的活躍をするも、除隊後
PTSD(心的外傷後ストレス障害)で苦しむ狙撃兵の半生を描く)
特に印象に残っているこれらの作品群を振り返るとき、「彼は年を取ることを忘れたので
はないか」とさえ感じさせる。

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