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山本周五郎の「寝ぼけ署長」を読み返す

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ちょっと前になるが、このブログで山本周五郎作品の「青べか物語」をご紹介したことがある。

山本周五郎は藤沢周平と並んで、かつて片っ端から読み漁った大好きな作家のひとりであり、しかも今住んでいる千葉県浦安の昔を舞台にした作品とあって、興味深く丁寧に活字を追った。

彼の「赤ひげ診療譚」や「さぶ」も心にしみる作品だが、その流れで最近になり「寝ぼけ署長」を読み返してみようという気になり、再び丁寧に活字を追った。

冒頭「中央銀行30万円紛失事件」から始まり、終章の「最後の挨拶」」まで、ともかく心のこもった名署長の在任5年間の活躍は魅力たっぷりである。

五道三省という変わった名前で、年は四十か四十一、太って格好がさえない上に、小さな目はしょぼしょぼ、動作は鈍く言葉もたどたどしい。

いつも寝ぼけ眼でともかく署でも官舎でも寝てばかり、お人よし、ぐうたら、無能呼ばわりされるが、こんな風評は一向に気にしない。

ところがこの独身署長は、英独仏の三か国語に通じ、漢文にも詳しく、ものすごい読書力を備えた傑物である。

しかもいったん事件が起こってからの捜査のやり方はこれまでの常識にとらわれず、かつ「罪を憎んで人を憎まない」温かみの溢れるもので、署員はもちろん、地域の住民、とりわけ貧民窟の貧しい人々への目線も決しておろそかにしない。

心のこもった丹念な捜査ぶりが、多くの難事件を彼一流のやり方で解決に導いてゆく。そのほんわかとした手法は、いつの間にか地域の人々の心の中に溶け込み、この「寝ぼけ署長」を慕うファンの輪は町の隅々まで広がってゆく。

五年の任期が終わりいよいよ本庁への転勤が決まると市民の多くから留任運動がおこる。

氏の分野では、大きく分けると探偵小説のジャンルに属するが、周五郎ならではのヒューマニズムがふんわりとしたタッチで描かれており、何度読み返しても飽きない。

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